オフィスのWi-Fiで決めることは、機種選びではありません。アクセスポイントをどこに何台置くか、どの周波数帯を使うか、業務用と来客用をどう分けるかの3つです。この3つが決まっていれば、機種は後から選べます。逆に、機種だけ良いものを買っても、置き場所が悪ければ届きません。
そして周波数帯の選び方には、電波法上の制約が絡みます。屋外に飛ばしたい場合や、屋外の倉庫や駐車場をカバーしたい場合は、使える帯域が限られます。ここは好みの問題ではないので、先に整理しておきます。
帯域は、屋外に出すかどうかで決まります
総務省が公表している利用条件を、そのまま並べます。
| 周波数帯 | 屋内 | 屋外 | DFS | 使いどころ |
|---|---|---|---|---|
| 2.4GHz帯 (2400-2497MHz) | ○ | ○ | 不要 | 遠くまで届きます。ただしISMバンドで、他の機器と共用します |
| 5.2GHz帯 (W52) | ○ | △ 条件付 | 不要 | 屋内の主力。屋外に出すには登録局の手続きが必要です |
| 5.3GHz帯 (W53) | ○ | × | 必須 | 屋内のみ。隣の帯域で気象レーダーが運用されています |
| 5.6GHz帯 (W56) | ○ | ○ | 必須 | 屋外に出せます。屋外の倉庫や駐車場をカバーする場合の選択肢 |
| 6GHz帯 (5925-6425MHz) | ○ | LPIは× VLPは○ | 不要 | 混みにくい帯域。端末側の対応が前提になります |
2.4GHz帯はISMバンド(産業科学医療用の周波数帯)で、Wi-Fi以外の機器も同じ帯域を使います。総務省の資料でも、電子レンジや医療用高周波設備などのISM機器から漏れ出る不要輻射電力について、干渉電力量の測定を行った経緯が記されています。
現場でよくあるのは、2.4GHzしか使えない機器が数台あるために、全体を2.4GHzで組んでしまっているという状態です。プリンタや測定機器がそれに当たります。この場合、その機器のために2.4GHzを残しつつ、パソコンとスマートフォンは5GHz帯に寄せる、という分け方をします。現地で、何が2.4GHzを必要としているかを数えます。
メッシュとローミングは、別のものです
言葉が混ざりやすいところなので、分けて書きます。
- 建物の構造。鉄筋、鉄骨、木造で電波の通り方が変わります
- 間仕切りの位置と材質。金属やコンクリートの壁は電波を止めます
- APを置ける場所。天井に付けられるか、電源とLANを引けるか
- 同時につながる台数。パソコン、スマートフォン、プリンタ、タブレットを実数で数えます
- 2.4GHzしか使えない機器の有無と台数
- 屋外や別棟を使う予定があるか。ある場合は使える帯域が限られます
- いまの有線LANの配線と、スイッチの位置。APより先にここが詰まっていることがあります
- 来客用のWi-Fiを出すか。出す場合、業務用と分けられているか
来客用は、速さより分離です
ここは設定の話です。機器を増やさずにできることが多くあります。
来客用のWi-Fiで大事なのは、速さではなく社内の機器に触れないようにすることです。同じネットワークに来客の端末が入ると、社内の共有フォルダやプリンタ、複合機に届いてしまいます。パスワードを分けるだけでは分離になりません。ネットワークとして分ける必要があります。
この分離は、多くの場合いまの機器の設定でできます。機器を買い足す前に、いまのアクセスポイントとスイッチで何ができるかを確認します。できない場合に、はじめて機器の話になります。
- 電波を強くするグッズの販売はしていません。置き場所と帯域の設計で対応します
- 内装工事は承っていません。天井や壁の加工が必要な場合は、工程の合わせをご相談ください
- 受付は平日9:00〜17:00です。時間外の緊急対応はお約束していません
APは何台必要ですか
面積ではなく、間仕切りの位置と同時接続数で決まります。同じ広さでも、壁が多ければ台数は増えます。現地で間取りを見ながら数えます。
屋外の倉庫まで飛ばせますか
帯域によります。2.4GHz帯と5.6GHz帯(W56)は屋外で使えます。5.3GHz帯(W53)は屋外では使えません。5.2GHz帯(W52)を屋外で使う場合は、登録局の手続きが必要です。建物の外に出す話は、電波法の条件から確認します。
メッシュにすれば全部つながりますか
線を引けない場所に足すときは有効です。ただし、段を重ねるほど先の速度は落ちます。線を引ける場所は、有線でつなぐほうが安定します。
歩くと切れます
APの重なり方と電波の強さの設計で起きる症状です。台数を足すより、いまのAPの出力と配置を見直すほうが効くことがあります。症状の切り分けは会社のWi-Fiが遅いに書いています。
セキュリティも一緒に見てもらえますか
来客用の分離までは、このページの範囲で扱います。出入口の機器やアカウントの話はUTM・ファイアウォールと分けています。保守の分界点はネットワーク保守です。
- 総務省 電波利用ポータル「無線LANの屋外利用/上空利用について」 — 周波数帯ごとの屋内・屋外・上空の利用可否。5.3GHz帯および5.6GHz帯はDFS機能の具備が必須(屋内・屋外問わず)。5.2GHz帯の屋外利用は登録局の手続きが必要で、基地局・陸上移動中継局の運用には第三級陸上特殊無線技士の資格が必要。5.3GHz帯では気象レーダーが運用されている
- 総務省「2.4GHz帯無線LAN等の技術基準等の見直しに係る報告」 — 2.4GHz帯はISMバンドを使用し、電子レンジや医療用高周波設備等のISM機器から漏れ出る不要輻射電力などの干渉電力量を測定した経緯が記されている
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